sparkling night
彼女は手に持っていたグラスに口をつけ
チラっと俺を見る。

甘そうなカクテル。
ほのかにピンクなそのカクテルは
ストロベリーミルクといったところだろーか。

「ねぇ、私も一緒につれて帰ってよ。」

俺をじっと見つめる彼女。


ゆるーくパーマのかかった胸のあたりまで伸びている髪。
小動物みたいたいな丸い目。
ぽてっとした唇。
可愛らしいその容姿からは
想像のつかない言葉だった。

酔っているのか?
俺をじっと見つめる目は
どこか強がっているようで少し揺れていた。


「すっげー大胆なこと言ってるの気づいてる?」

「え?」

「つれて帰ってとか、俺期待しちゃうよ?」


「あ、えっと...」


少しあたふたする彼女。
表情がコロコロかわる。
自問自答でもしてんのか?
なんだこいつ、おもしろい。

クラブで男に声かけちゃって
上目使いで誘っちゃう
危ない女?

それとも
切り返しに困っちゃって
あたふたしちゃう
うぶな女?

どっちが本当の彼女だろう。



「ねぇ、俺を誘おうと思ったの?」.

ふぅーっと煙を吐き出し
タバコの火をけす。
彼女との隙間をなくすように
近づいた。

「いいよ、連れてかえって欲しいならご希望通りに致しますが?」


彼女を覗きこむ。
しっかりと目があった。


「名前。」

「え?」

「名前は?」

「あ、奈々!!」


顔を近づけキス手前で寸止め。

「.俺は太一、
よろしくね奈々ちゃん。」

そして、優しく口づけをした。

拒否することなく
受け入れる彼女の唇からは
アルコールの刺激的な香りと
ストロベリーの甘い香りがする。


俺らの周りにはミラーボールの光が煌めいている。
夜はまだ始まったばかり。

甘い甘い始まり。

end.
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