叶う。 Chapter2
「申し訳ありませんが、もう電車が来ますので。」
私はそう言って、二ノ宮さんから視線をそらした。
だけれど二ノ宮さんは、視線をそらした私になおも話しかける。
「あなたには才能があるわ。私に任せてくれたら、あなたを絶対に成功に導く自信があるの。ねぇ、名前だけでも教えてくれないかしら?」
二ノ宮さんがそう言ったと同時に、いつもの電車がホームに入って来た。
耳障りなブレーキ音に紛れて、私は小さくこう言った。
「・・・アリス。」
私はそう言って、止まった電車の扉の前に立った。
「アリスね、いい名前だわ。じゃあアリス、気が向いたら電話して頂戴。」
二ノ宮さんがそう言って直ぐに、私の乗った電車の扉が閉まった。
私は空いている席に適当に座ると、駅のホームに視線を向けた。
二ノ宮さんはホームに立ったまま、じっと私を見つめ続けた。
段々と離れていく距離に、私も何故か視線をそらすことが出来なかった。
だけれど電車はあっという間に二ノ宮さんの姿を私の視界から消し去った。
私は今起こった出来事をふと考えたけれど、やっぱり興味すら湧かなかった。
だけれど何故か、貰った名刺を無意識に財布に仕舞いこんだ。
名刺という物は、捨てるに捨てれないので今度名刺入れを買いに行こうと密かに思った。