夜空の琥珀
 
「……こんなのはどうってことない」



 できるだけ平坦な口調を意識する。

 それは、この場である種の敗北宣言であった。

 認めたくない。

 だが「暴走」しかけていたことは事実だ。


 ――ほら見ろ、やはり明日は……。


 その言葉を遮るように声を上げる。



「絶対に行かないから。病院なんて行ってるヒマはない。先生にもそう言っておいた」



 断固とした意志だった。

 これだけは、なんと言われようと譲れない。


 ――もし僕がいなくなったら、彼女は独りになってしまう。


 傲慢だと言われてもいい。

 驕りだとなじられてもいい。

 だが彼女が僕を必要としてくれる限り、僕はそこにいなければならない。
 
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