夜空の琥珀
 
 帰宅した頃には、宵闇が空を染め始めていた。



「あら、もう帰ってきたの? せめて今日くらいは、もう少しだけセラちゃんと遊んでいてもよかったのよ?」


「……いい」


「聡ちゃん?」



 母さんの呼び声を無視して居間を通り抜け、真っ直ぐに自分の部屋へと向かった。


 ……気分が悪い。

 どうにも落ち着かない。


 夜風に当たりたくなって外へ出ると、運の悪いことに満月だった。



「……くっ!」



 血が、疼く。



 うっかり琥珀の光を見てしまった僕は、とっさに掴んでいたベランダの手すりに額を打ち付けた。


 衝撃。すぐ後に痛みがついてくる。


 歯を食いしばり、ただ床を睨みつけていた。
 
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