夜空の琥珀
 
 こうなることはわかっていた。

 だから早く帰ってきたんだ。

 傍にいるほど、離れたくなくなってしまうから。


 僕はまだ、この衝動を抑えることができない。

 今の僕に会えば傷つけてしまうから、僕は何も言わずに君のもとを去る。


 君が泣いても、それをやめはしないだろう。



 ――夜が更け、満月が空の頂点へと昇る。

 月の力が最も強くなる時間。



「……っ!」



 今夜は一晩中眠れないだろう。

 よりにもよって、それが今日だなんて。


 一晩中、あの子の笑顔が浮かんでは消える。

 それは、生き地獄だった……。



「――聡士くんっ!!」



 突然の声に耳を疑い、反射的に顔を上げる。

 夜になり飛躍的に上昇した視力では、その声の主が誰なのか、判別するのは容易だった。

 僕は唇を噛み締め、部屋を飛び出した。
 
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