課長さんはイジワル2
もしかしたら、実はノリは本当は生きていたのかもと思っていた私は力が抜けて、その場にへたり込んでしまう。

そんなはずないことは十分分かっていたはずなのに……。


「ど、どうしたの?!大丈夫?杉原さん」

「なんで、あんたがノリの……ノリだけしか知らない、しかもアレンジした曲を弾いてるのよ」


涙に声が揺れる。


「えっ?もしかして、さっきの曲のこと?」

「……」

「そうだったんだ。俺、NORIさんのアレンジしたラストのリフレインが結構好きで勝手に『いただき!』って……まさか、NORIさんが弾いてるとか思った?」


図星を指されて、私は屈みこんだまま、両腕に顔を埋める。


「……ごめん」


謝りながら安田が私の目の前に屈みこむ。


「でも……さ、NORIさんもひどいよね」

「えっ?」

「だって、そうだろ?
『愛』ちゃんがすごく可愛い可愛いって俺にすっげぇノロケといて、この曲だって散々俺に聴かせといて……。
そのくせ、『そんなに可愛いんですか?だったら、俺、会ってみたいんですけど』って言っても、絶対、合わせてくれなかった。
俺、何回かこの部屋に来たこと、あったのに……。
今にして思えば、きっと、NORIさんは分かってたんだよね。
君に会えば、俺は絶対恋に落ちてしまうって」

「安田……」

「そして、その通りになった」





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