約束ラバーズ
君を失う恐怖

数日後。

次は僕が風邪を引いた。


理由はわかっているけれど。



ベッドの脇で、温度計を見つめ母さんが言う。

『亜希ちゃんの風邪、もらっちゃったのかしら?』


Tシャツを着替えながら答える。

「母さんは旅行行ってきなよ。」

『でも…』

申し訳なさそうな顔をする母さんに笑う。


年に一度もない泊まりの旅行。

ずっと楽しみにしていたのを知っている。



「昨日病院も行ったから、薬もあるし。


それにもう僕、高校生ですよ。」


その一言が効いたのか、母さんは身支度を始めた。

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