Snow Noise
関さんが出ていった、事務所。
恐る恐る視線を上げると、腕を組んで壁にもたれる臣君の姿。
要領が悪いのはわかってる。
だけど、どうしてそんなに反感を買うのかな……って。
「こえーな、あいつ」
それは、―――。
「気にするなよ」
きっと、あなたの、せいだよ。
「もう、やだ……」
まさか自分に、―――。
こんな甘ったるい声が出せるなんて思いもしなかった。
「大丈夫か?」
「うん」
ぱっと腕が広がって、おいで、のポーズ。
私は躊躇いもなくその腕に飛び込んでいく。
夏休みからアルバイトを始めてもうすぐ半年。
店の前に大きなクリスマスツリーが飾られてから、お店は忙しくなる一方で。
いつまで経っても慣れない私が音を上げないでいられるのは
この川島臣(かわしま おみ)君のおかげ。
臣君がそばにいてくれるから、私はここで頑張っていられる。
臣君が守ってくれるから。