花と死(後編)
「そんなこと言って、昨日も探してたでしょ。力尽きて倒れてたの見つけたリコリスさんがびっくりしてたよ?」
「だって……」
まるで駄々っ子のようなクラウジアはシエリアよりも子供に見えた。
(昨日?……あれから、時間が経っているのか?)
ヴォルフラムはぼんやりと思う。
声を出す力も出そうになかった。
(此処は何なのだ?転生したのか?)
状況が解らずに辺りを見回す。
徐々に手足の感覚が蘇ってきた。
クラウジアとシエリアが遠ざかる。
「ま、て。」
手を伸ばし、呼び止めようとしたが届かなかった。

意識が遠のく。

再び目が覚めると、やはり同じ地面だ。
「フラン。」
先日と同じようにクラウジアが呼ぶ。
「クララー!」
やはり、先日と同じようにシエリアから呼ばれる。

そんな日々が続いた。
よく、誰にも見つからないなと思いながら過ごしていた。
もしかすると、自分は幽霊か何かなのかも知れないとさえ思えてきた。

理解したことは、あれから数ヶ月経っているということ。
そして、メイフィスという子供は結局、孤児院に預けられた。
クラウジアは毎日、この近辺を彷徨っているのだということ。
断片的だが、自分が死んだと認識されていることは確かだと解った。

空腹さえ感じない程に頭がぼんやりとしていた。
「フラン。」
その声はクラウジアだ。
また、探しているのだと理解した。
(もしかしたら、死んだはずの俺をずっと探しているのか?)
だとしたら、何ヶ月経つのだろう。
どんなに辛い思いをさせたのだろう。
(此処に、いる。)
「くら、う、じあ……」
力が入らない身体を奮い立たせて呼ぶ。
「フラン?」
クラウジアは振り向いた。
「クラウジア。」
それに応えるように呼んだ。
「フラン!居るのか?」
クラウジアは辺りを見回した。
そして、見つけた。
「フラン……!」
クラウジアは心底嬉しそうに笑って抱きしめた。
頬を涙が伝う。
「馬鹿。探したのだぞ。……馬鹿、馬鹿。大好きで、一番、だいじなひと。」
そう言って力尽きたように倒れた。
ヴォルフラムもそれに押し倒されるような形で意識を失った。

「……で、何故こうなる。」
役人が仏頂面で二人を見る。
「ん。すまなかった。」
クラウジアは真顔で返す。
「だが、妙な話もあったものだ。」
「あの辺りはちゃんと捜索しましたよー?シャルドネさん。」
役人に女性が言う。
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