天翔ける君
恵都は勢いよく立ち上がった。
饅頭の包みを手に廊下をぱたぱたと走る。
縁側は月明かりのおかげで蝋燭がなくても十分明るい。
慣れのせいか、恵都は夜目がきくようになってきた。
「あ、いた!山吹さん、これ!」
山吹は先程まで恵都のいた庭の、ちょうど裏にある庭の掃き掃除をしていた。
足音で恵都がくるのを予想していたのか、にっこりと笑顔を浮かべる。
「千鬼がお饅頭をくれたの。お茶を淹れるから、休憩にしない?」
「いいね」
と山吹は竹ぼうきを立て掛け、恵都と連れ立って台所へ向かった。
一緒にお茶の準備をして、ふたりは食卓に向かい合って座った。
蝋燭のほのかな明かりが山吹を照らす。
熱いお茶を飲みながら饅頭を頬張る姿からは、先ほどの告白なんてなかったことのように思える。
「出かけるってなんの用事かと思ったら、あいつ饅頭なんて買いに行ってたのか」
珍しいよね、などと、山吹は恵都に話しかける。
その様子はやはりいつもと変わらず、恵都は話をきり出すのに勇気がいった。