天翔ける君



山吹は「これは子ども扱いしてるんじゃないよ」と笑って、

「可愛いなぁ、なんてそうそう面と向かって言えるもんじゃないだろ?だから、その代わり。あと、元気出してって慰めてあげたい時とかさ。子どもにするのと恵都ちゃんにするのとじゃあ、全然意味が違うんだよ」

山吹の視線は甘くて、恵都は手で顔を煽いだ。
そんなことを言われると、顔が火照って仕方がない。



――じゃあ、千鬼が頭を撫でてくるのも子ども扱いとは違うのかな。
恵都は燭台片手に首を傾げた。

食卓のある居間から千鬼の私室に続く廊下は庭に面しておらず、だからといって明かりとりのための戸などもない。
歩きなれた廊下とはいえ、恵都は蝋燭が手放せなかった。

最初こそ暗闇を怖く感じたが、数日もすればなんとも思わなくなった。
不便だと思う回数も徐々に減ってきた。

千鬼の私室を前に、恵都は一度深呼吸をした。

「千鬼」

声をかけると、なんだ、といつも通りの短い返事が返ってきた。



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