恋するキオク
この人が……米倉圭吾?
当然制服なんて着てなかったけど、優しい目元がなんとなく省吾に似てた。
それでも髪は明るい茶色で、耳元にはシルバーのピアスがいっぱい光っていて。
省吾とは、全然違う。
「……沢さん、また来る」
「おう、待ってるぜ」
オーナーにだけ挨拶をして帰ろうとする圭吾は、隣をすれ違っても省吾の方には見向きもしなかった。
省吾だって、声もかけない。
「省吾、いいの?」
仲が悪いんだろうか。
私が省吾の腕を引くと、その瞬間に圭吾が微かにこっちを見た気がした。
不思議な感覚が、足下にまで刺激を伝える。
「圭吾、たまには学校出ろよ。母さん心配してるし、祖父ちゃんにだって迷惑かけるだろ」
省吾がそう言うと、圭吾は少しだけ振り返って、また何も言わず店を出て行った。
私たちの中に流れる、変な空気。
「……はぁ、どうしようもない奴だろ。あれが弟の圭吾。もし学校に出てくるようなことがあっても、全然関わらなくていいから」
省吾は苦笑いで私を見下ろした。