恋するキオク
オレを誉める相手には感情なんて見えないのに、圭吾を誉める相手には心からの思いが見える。
「すっご〜い、圭吾くん!ピアノ上手なのね」
ピアノの先生の時もそうだった。
先生は本当に、圭吾の才能に感心していた。
オレを讃える時の、必死な親の顔とは違う。
だから…
「省吾っ!圭吾っ!」
「……ーーっ」
「省吾…、大丈夫?」
ベッドの上の陽奈が、オレの落ち着かない様子を見て心配する。
自分のしたことが、すべて正しかったなんて思ってない。
陽奈がこんな状態になったことにも、申し訳なさを感じていないわけじゃない。
「今日はいい天気だったし、散歩も気持ちよかっただろ。春乃ちゃんのことも思い出せなかったの?」
「うん…、でもなんだか気持ちが通じ合える感じがして。またすぐに仲良くできそう」
「そっか。……陽奈?」
「なに?」
神様だけはオレに味方した。
そう思っちゃ、いけないのかな。
「明日は早めに迎えに来るから」
純粋に笑う陽奈が、オレの疲れた心をずっと癒してくれてた。
陽奈だけには、オレ一人を見ててほしかったんだよ。
「省…吾……」
久しぶりに触れた唇に
緊張感が伝わる。
震えてるのは、オレの方だった。
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