恋するキオク



些細な出逢いは、やがて大きな感情へと膨らんでいく。

揺れて、迷って、

やがて壁にぶつかり崩れ落ちて。



それでも何かに希望を重ね、それと引き換えに何かを犠牲にする。

結局は、報われない恋の唄。




「自分で選ぶというならそれでいい。音楽家への道なら私が用意した。私のように音楽から離れ、彼女を見守るというならそれもいいだろう。だが彼女を省吾に託し、お前には才能を無駄にしてほしくないというのが私の願いでもある」





考える。

そう残して、オレは理事長室を後にした。



不思議なのは、なぜか気持ちがすっきりしていたこと。

ずっと霞がかっていた後ろに繋がる道を、やっと遠くまで見渡すことができたからなのか。

腹の立つような気持ちさえなかった。



でも、さすがに祖父ちゃんを父さんと呼ぶことはできなかった。

なんか、今更だし。




進む道の先は自分で決める。

でも正直、さっきまでの勢いは消えてしまって…。答えをいつ出せるかは分からなくなってた。



海外へ行こうと決めてたのに、あんな話を聞いたら気持ちがぶれて。

音楽家への道を進まなくても、ピアノを捨てるわけじゃない。

きっと祖父ちゃんも、時々弾いていたはずなんだ。

だからあんなにも、滑らかな指さばきは変わっていなかった。




祖父ちゃんは…

今も母さんを想ってるのか…?




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