恋するキオク
それでも一向にうなずいてくれない店員の後ろで、用意されてたピアノが静かに片付けられていくのを見ると
さすがに諦めるしかないかなって、オレたちも思い始めて。
「一曲だけでいいっつってんのに」
「…善矢、遅れたオレが悪いんだって」
「それはお前にだって省吾さんといろいろあったんだろ。そんなの見ればわかるから別にいいんだよ!」
「でも……、茜も悪かったな。ありがとう」
「あ、あたしはいいよっ。ちょっとは年上らしいことしてやりたかっただけだし。…聴けないのは、何かちょっと惜しいけど」
「そうそう、一曲くらいなら聞いてみたいとも思うよねぇ。そんなにいい演奏を聴かせてくれるって言うならさ」
…………えっ
ふと静まったオレたちの輪に、突然参加してきた低音の声。
恰幅のいい、白髪まじりの…
変なおじさん?
「支配人!」
「ええっ!?」
どうやらそのおじさんは、ここの支配人らしく
オレに、弾かせてくれようとしてるみたいで。
「昔からの友人がえらくキミを宣伝するもんだから。音楽好きな者としては、興味も湧くだろ」
「友人…?」
「ぅ、おお!なぜここに!」
善矢の声に驚いて、その視線の先に振り向くと
なぜかそこには
留守番をしてるはずの…
「沢さん!」
「沢さんナイスっ!」