恋するキオク
窓の外を伺う圭吾の横顔は、暗くなったガラスに映り込んで透けるように神秘的に見える。
どうしてこんなに、不安になるんだろう。
圭吾って、何だか消えてしまいそうな雰囲気を持ってるんだ。
ある日突然居なくなってもおかしくないような。
変な言い方だけど、ここに居るのに、ここに居ないみたいな。
そんな不思議な感じがする。
私がいつまでも見つめていると、圭吾は少し困ったように前髪を直してフッと息を吐いた。
そんな仕草に、
思わず胸がぎゅっとなる。
なんだろ、この感覚……
「それで、イベントの出し物は決まったの?」
「はっ、うん!もう決まったよ!えっ、あのっ、ちょっと待ってね、えっとね……」
いきなり振り返った圭吾から、イベントの話しが出て驚く。
私は持っていた手提げ袋をあさりながら、慌てて劇の台本を取り出して圭吾に見せた。
「こっ、これ!みんなでやる劇の台本なんだけど……。もちろん圭吾くんも、来てくれるんだよね」
圭吾は黙って受け取ると、ゆっくりとページを捲りながらしばらく考えて。
私も向かい側から一緒に覗き込みながら、圭吾の反応を待った。
オレには関係ないとか言われるかな…
くだらないとか思われるかも。
たとえ裏方でも、圭吾には一緒に参加して欲しいんだけど。
そんなことを考えながらも、なぜかバクバクする心臓はなかなか治まらなかった。
それに
「これさ……お前が主役やんの?」
「うん!な、なんで知ってるの!」
「いや、これ主役用の台本だし」
「えっ!!あ、そうか。そうだった……」
やけに慌ててばかりの私。
無理にこの場を平然とさせようと、なんだか必死になってる。