恋するキオク


「あと、本当によく泣く奴がオレをイベントの練習に出させようとするからさ。……あんまりそういうとこオレに見せんな」


「圭吾くん……?」



そしてそのまま屋上を出る扉に向かって歩き出す。

わかったような、わからないような……。

私は圭吾の背中を追いながらもう一度聞いた。



「ねぇ、どういうこと?」



扉を開けた瞬間に巻上がる空気で、圭吾の着崩した制服がふわりと揺れる。



「オレもカイに同情するだろ」



振り返って言った圭吾の表情で、私の胸がまた熱くなった。

なんだか私……






私が教室に戻ると、やっと来たかとばかりに配役の決まっていたクラスメイトが立ち上がり準備を始めた。

でも後ろから入ってきた圭吾を見ると、慌ててみんなは椅子に座り直して。

手持ち無沙汰な手をあちこちに動した。



「あ、あのね…、米倉くんも手伝いにきてくれたんだけど。細かい作り物とか担当だったと思うんだ」



ぽつんと取り残された私の言葉。

張りつめた空気の中で、誰のものか分からない緊張の鼓動が教室内に響く。

お互いに送り合う視線。



「うん…そうだよ。じゃあ、」



私の言葉に相づちを打って、クラス委員の牧野さんが圭吾の前に画用紙の束を置いた。



「こういうのとか……作ってもらってもいいでしょうか」



差し障りのない丁寧語。

周りのみんなも息をのんで圭吾の返事を待つ。

そんなに怖がらなくていいのに。



「……わかったよ」



でも圭吾のその言葉にみんながフゥッと息を吐き、私も圭吾を見て思わず笑みがこぼれた。


良かった……




そしてこの日以来、圭吾はクラスの女子から憧れられる存在へと変わって行ったんだ。



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