恋するキオク



オレは勢いよく扉を開けて外に出た。

それからすぐに茜の手を取り、みんなの元を後にして茜の部屋へと足を速めたんだ。



「圭吾っ、な、なんだよ!どうかしたのか?」


「…さっさと歩けよ」



オレが必死で抑えてきたことに、簡単に口を出されたのが気に入らなくて。

いや、そういうんじゃないかもしれないけど。なんていうか、悔しいっていうのかな。

そんなこと言われたって、今のオレにはどうすることもできなくて。

それが、すごくもどかしくて。





「善矢。圭吾の奴、ちゃんと納得した?」


「さぁ、どうかな。でもあいつの不器用さには同情するよ。…バカなことしなきゃいいけど」





茜の部屋は、活動した後のみんなのたまり場みたいなものだ。

そのまま騒いで、みんなで泊まっていくこともよくある。

考えてみれば、たしかに二人で泊まることなんてなかったな。



「だから…何なんだよ……」


「え?何言ってんだよ圭吾……って、うわっ!」



部屋に着くなりオレは茜をベッドに押さえつけ、そしてその体の上にまたがった。

静かなはずの部屋の中で、オレの動揺の鼓動がうるさく耳につく。



「お前が泊めたんだからな」



後から文句を言われるのはごめんだ。

オレは先に茜に承諾を求めた。

すると茜は、下からじっとオレを見つめて



「圭吾……」


「なんだよ」


「お前、泣いてるみたいだ……」


「っな、…なに言って」



オレが一瞬体を硬直させると、茜は自分の腕をオレの首に絡めて。

それから深く、唇を重ねてきた。



< 68 / 276 >

この作品をシェア

pagetop