恋するキオク
へぇ、そうなんだ。
春乃ちゃんは、ぐいっとオレの顔を覗き込むように乗り出してきた。
オレは少し距離を取るように椅子を後ろに下げて、それから少し黙って考えた。
陽奈がユリアね。
全然聞いてなかった。
いつも一緒にいる時は、それよりもっと肝心なことにばかり気を取られてたからな。
それは陽奈が主役なら見るのも楽しみだけど。
オレには今、イベントの出し物なんかより陽奈自身のことの方が重要だったし。
圭吾とのことの方が…
「相手の役、先輩の弟サンみたいですよ」
「え……、圭吾?」
「はい、だから髪の色まで変えてたし…。こんなこと言うのも変だけど、なんかやっぱり先輩と似てますよね。……あ、すみません」
似てるか…
なんか久しぶりに言われた。
「いや、それは弟だからね。それより春乃ちゃんのクラスのカフェも楽しみにしてるから」
「えっ!先輩来てくれるんですか」
「それは一応生徒会長だし、各クラスの出し物は全部回らないといけないから」
「わぁ、大変ですね。じゃあ私冷たいものとか用意しときますよ!」
「はは、ありがとう」
別に大した場面があるわけでもないし、構わないと言えば嘘になるけど
圭吾が相手か…。
やっぱり、さっきのあの姿は圭吾だったんだな。
髪の色まで変えるなんて、どうしたんだよ。
「じゃあ先輩あとで〜」
軽く手を上げて応える。
また静かになった生徒会室の椅子に座り、オレは目を閉じて顔を上げた。
みんなのざわめきが、嫌でも窓から入ってくる。
どうすればいいのかな……
「記憶か……」
圭吾……
どうすればお前は、オレの前からいなくなるんだよ。