Ri.Night Ⅰ 【全完結】
ストーカー君の声と共に後部座席のドアが開いて、そこから誰かが降りてきた。
その姿が露になった瞬間、
「ブーーーッ!!」
口に含んでいたジュースを思いっきり吹き出してしまった。
「なっ!なん、なんでっ!?」
視線の先にいる男をまるで幽霊を見るかのように凝視するあたし。
いやいやいや、ちょっと待って。意味分かんない。なんでアイツが此処にいるの!?
何度も瞬きを繰り返して確認するけど、“あの男”に間違いなく、もう絶望しかない。
なんで!?
「何でアンタが此処にいんのよ!!」
目の前に居るのは呼び出した失礼男ではなく、あたしが股間を蹴ったあの“キモ男”、いや、“中田”で。
中田はニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべながらあたしを見ている。
「呼び出したのはそっちだろう?東條 凛音サン?」
「呼び出したって、まさか……」
中田の言葉を聞いて気付いた。
ストーカー野郎が騙していた事に。
「アンタ、あたしを騙したの!?」
直ぐ様ストーカー男に掴み掛かり、キッと睨みつける。
「だ、騙したってアンタが勝手に勘違いして……」
「そうだけどっ!でも違うって一言言えばいいじゃない!」
「それは……」
あたしの気迫に押され、少しずつ後ろへ仰け反るストーカー男。
このまま行けば二人共後ろへ倒れそうだけど、今はそんな事気にしていられない。