プラネタリウム
「ねえ、何してんの。」
少年は驚いたのか、振り返るや否や目を丸くして、
逃げようとでもしたのか、足を踏み出した。
「何で逃げるの。俺暇なんだよね。話そうよ。」
威かさないよう、優しい口調にしたつもりが、
少年にはなにも効いちゃいないらしい。
「ねえ。せめてなんか答えてよ。別に、
かつあげとかする訳じゃないからさ。」
少年はいっこうに口を開かない。
スケッチブックを只見つめるだけだった。
これ以上話しかけて通報でもされたらとんでもない。
もういいだろう、と俺は帰ろうと思い振り返った。その瞬間、バサバサッと
スケッチブックの開く音がした。
驚いて振り返ると、少年は何やらスケッチブックに文字を書いているらしかった。書き終わったとかと思うと、そのスケッチブックを俺に突きつけるように見せた。
『僕も暇だよ。』
右上がりの文字。大きなスケッチブックいっぱいに書かれている。会話をしているのか、これは。
「えー...と」
その言葉は俺に向けてなのか、会話なのか。戸惑って口篭ると、又少年はスケッチブックのページをめくり、言葉を書いている。其れを俺に向け、困ったような顔で俺を見た。
『ごめんね 僕 喋れないんだ。』

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