問題児のヒミツ[短編]
「みーやびちゃんっ」
「?」
「あげる!」
呼ばれて振り返ると小さな花束を持った男の子がいた。
顔はなぜだかぼやけて見えない。
けど、銀縁メガネをかけているのは見えた。
あぁ、これは夢なんだ、と直感的に思った。
だけど、これは幼い頃ホントにあった出来事。
この男の子は誰だっけ?
名前が出てこない。
あぁ、あと少しで思い出せそうなのに…。
夢から覚めちゃう。
「みやっ……!」
バッ、とあたしに覆い被さるように花凛が顔を覗き込んでくる。
ん?ここはベッド?
まさか家?……じゃないな。
保健室?
「立ち上がった途端に倒れたんだよ!びっくりしたんだから!」
「ちょ、あんま大声出さないで、頭に響く」
「あ!ごめん!」
騒いでるあたしたちに気づいたのか、保険医の先生が寄ってくる。
「起きたのね、よかった。軽い脳震盪起こしてるみたいだけど……、一体何をしたの?」
「あー…」
なんか思い出した。
あたし、鈴谷が思いっきり開けたドアにぶつかったんだっけ。
「ドアにぶつかっちゃって」
「おでこも傷があるし、そうみたいね……」
ていうか、張本人は一体どこ行ったのよ。
一言、言ってやらなきゃ気がすまない。
「そういえば鈴谷くんは帰ってこないわねぇ」
「鈴谷がどうかしたんですか?」
「なんかね、みやをお姫様抱っこしてここに運んだあと、ダッシュでどっか行った」
お、ぉ……!?
「お姫様抱っこ!?」
なんとも聞き捨てならないセリフが聞こえた!
「うん、お姫様抱っこ」
「なっなっ、なんで花凛が運んでくんないの!」
超恥ずかしい!
誰かに見られてたら、それこそもう教室いけない!
「無茶言わないでよ、こんなか弱い美少女にそんなことできないよ」
なに?
誰がか弱い美少女?
ジトッ、と花凛を睨むと、慌ててこう言った。
「そっ、それに、鈴谷ったらすんごい早さで抱っこしてここに来たんだよ?追い付くので精一杯だったよ」