2人だけの秘密。
広喜くんは黒いキャップを被っていて、怒ったような表情であたしを睨み付けている。
………も、もしかして…!
あたしは広喜くんを見ると嫌な予感を覚えて、逃げるようにして再び部屋に入ろうとする。
だけど広喜くんは、そんなあたしの腕を即座に引き留めて、言った。
「待てよ。今日は逃がさねーぞ、」
「!?っ…」
「お前、この前は俺をマジで簡単に裏切りやがったな。
お前のせいであの後仲間から散々文句言われたんだぞ、俺。どーしてくれんの?
おまけに亜季にも一方的に婚約解消されたし」
広喜くんは怒り口調でそう言うと、あたしの腕を掴んでいる手にぐっと力を入れる。
でもそんなのはあたしは知らないし、むしろ被害者は完全にあたしの方だ。
だけど恐怖でそれを言えずにいたら、ふいに広喜くんがあたしの腕から手を離し、突然あたしを部屋の中へと強引に押し込んだ。
「!!っ…や、広喜くんやめっ…!」
あたしはそんな広喜くんの行動にびっくりして抵抗するけど、男の人の力には敵わずにそのままあっけなく真っ暗な玄関に入らされる。
そしてドアがバタン、と閉まると広喜くんはそこに鍵をかけてあたしを廊下の床に乱暴に押し倒した。
「やだ、やだっ…!」
修史さんっ…修史さんたすけて!
だけどその声は届くはずもなく、広喜くんがあたしに跨がってきて言った。
「…だから、責任とれよな。鏡子、」