2人だけの秘密。


「修史さっ…」



その体を慌てて離そうとするけれど、修史さんの力が強すぎてそれが出来ない。

むしろ腕の力は強くなって、少し痛いくらいだ。


だけど…痛いのにやっぱり心地がいい。


修史さんがあたしの後頭部に手を優しく添えてくれるから、あたしはその腕の中で思い切り泣いた。



肩を震わせて泣いていると、修史さんがあたしの頭をぽんぽん、と優しく撫でる。

それに何も言わずにずっと抱きしめてくれて、あたしはその広い背中に腕を回すと、しがみつくように泣いてしまった。





広喜くんと修史さんなら、今だったら断然に修史さんを選ぶのに。

どうして少し前のあたしは、あんなに最低だった広喜くんから離れられなかったんだろう。


修史さんの方が凄く優しくてずっと傍にいてくれるし、あたしの頬を叩いたりしないし、いっぱい愛してくれるのに…。


広喜くんとはすぐに別れた方がいいって、自分でもわかっていたのに……。




あたしがもっと早く広喜くんと別れていたら、今頃こんな風に泣かなかったのかな。







そんなふうに思いながらしばらく泣いていると、やがて涙はだんだんおさまっていった。

そして修史さんがあたしを抱きしめている腕を離すと、あたしの後頭部を引き寄せて優しいキスをする。

触れるだけのキスをしてすぐに離すと、言った。



「…守ってやれなくて、ごめん」


< 134 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop