2人だけの秘密。
「修史さっ…」
その体を慌てて離そうとするけれど、修史さんの力が強すぎてそれが出来ない。
むしろ腕の力は強くなって、少し痛いくらいだ。
だけど…痛いのにやっぱり心地がいい。
修史さんがあたしの後頭部に手を優しく添えてくれるから、あたしはその腕の中で思い切り泣いた。
肩を震わせて泣いていると、修史さんがあたしの頭をぽんぽん、と優しく撫でる。
それに何も言わずにずっと抱きしめてくれて、あたしはその広い背中に腕を回すと、しがみつくように泣いてしまった。
広喜くんと修史さんなら、今だったら断然に修史さんを選ぶのに。
どうして少し前のあたしは、あんなに最低だった広喜くんから離れられなかったんだろう。
修史さんの方が凄く優しくてずっと傍にいてくれるし、あたしの頬を叩いたりしないし、いっぱい愛してくれるのに…。
広喜くんとはすぐに別れた方がいいって、自分でもわかっていたのに……。
あたしがもっと早く広喜くんと別れていたら、今頃こんな風に泣かなかったのかな。
そんなふうに思いながらしばらく泣いていると、やがて涙はだんだんおさまっていった。
そして修史さんがあたしを抱きしめている腕を離すと、あたしの後頭部を引き寄せて優しいキスをする。
触れるだけのキスをしてすぐに離すと、言った。
「…守ってやれなくて、ごめん」