妖刀奇譚
「なんだと」
がらりと変わった声色と共に、玖皎の瞳が氷柱のように冷たく鋭くなる。
当然だ、彼を怒らせるようなことを言ったのは自覚していた。
けれども、黙るつもりはない。
思葉は拳を握りしめて玖皎の眼差しに怯まないようにする。
嫌われたっていい、痛いのは嫌だけど殴られたっていい、玖皎に気づいてもらえるのならそれでいい。
ああ、今、こんなにも必死に喋っている。
自分以外のことでこんなに必死になって誰かに言葉を向けたこと、今まであっただろうか。
「おまえに何が分かる。
おれはこの千年の間、償いもできず重ねたくない罪を幾重も犯し続けてきた、望んでもいないのに人間の血を浴び続けてきたのだ。
今のように人の姿を得なかったおれにできた唯一の償いは自責だけだ。
……それを逃げているだと?ふざけるな。
百年すら生きていない、何一つ分からんがきのくせに」
「分かんないよ、分かるわけないじゃん。
あたしは玖皎のような経験なんてしたことないし、この先も絶対にしないから。
妖怪のあんたと違って千年も生きるような身体じゃないしね。
ええそうよ、あたしなんてあんたの十分の一も生きていないがきよ。
だけど15年間ぼうっと生きてきたつもりはないわ。
あんたと比べれば無知に等しいかもしれないけど、でも今まで生きてきたなりに考える頭は持っている。
がきだからって見下さないでよ。
少なくとも、玖皎が今やっていることは情けないただの自己満足だって気づいているわ」