妖刀奇譚





細川はプリントの内容を要約して話し始めた。



「最近、髪の長い女性を狙った通り魔が出ているそうです。


時間帯は深夜が多いですね。


本校の生徒にも、塾の帰りに髪を切られる被害を受けた女子生徒がいます。


振り返ったときには誰もいなくて、どのような人なのかは分かりませんが……みなさん、夜遅くまで外に居ないように。


塾や習い事が終わったら、なるべく複数人でまっすぐ家に帰ること。


おそらくその時点で既に10時11時を回っている人が多いと思いますので、寄り道はしないでください。


おうちの方にお迎えに来てもらうのが理想ですが、難しい人もいますよね。


自転車でも徒歩でも、多少遠回りになってもなるべく街灯が多く、すぐに助けを呼べれそうな道を選んで帰ること、いいですね?」



はい、と何人かが返事をしたところで、ショートホームルーム終了のチャイムが降ってきた。


折田が教室を離れるや否や、一時間目が始まるまでのわずかな時間、室内は様々な声であふれかえる。


自分の席に着いたまま古典の教科書を出す思葉の耳に、すぐ近くにいる女子グループの話声が聞こえてきた。




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