妖刀奇譚
「霊視はできるのか?」
「全然、そういうのは観えたことも聴こえたこともない」
「だろうな、おれに憑いている老婆が分かっていないようだし」
「えっ!?」
思葉は思わず後ずさった。
クッションに足を引っ掛けてしまい、背中からベッドにダイブする。
それを見た太刀が楽しそうに笑った。
「はははは、冗談だ、永近がおれを見ても何も言わなかっただろう?」
「……あんた、本当にいい性格してるわね」
もしこれが來世だったら確実に飛び蹴りはしている。
そして今の太刀の発言で、彼は心霊の類でないということがはっきりした。
そうでなければ永近が見過ごすはずがない。
「だが、おれをここに連れてきた男の肩には女がいたな。
永近はそれに気づいて、男に分からぬようさり気なく祓ってやっていたが、知っていたか?」
「し、知らない……てか、またそうやって適当なこと言ってるんでしょ」
「いや、これは本当だ。
おれが神社から出されたときから付いてきた女だ、あの神社で死んでから50年近くずっと、あそこから動こうとしなかったやつだった。
大方、あの男と波長が合って付いてきてしまったんだろうよ」
「そ、そうだったんだ……」