妖刀奇譚
思葉は4月の頃の記憶に意識を向けた。
霧崎綾乃(きりさき あやの)と武川実央(むかわ みお)とは、たまたま席が近かったのがきっかけとなって話すようになった。
それからのことは詳しく覚えていないが、ふと気がついたらすっかり打ち解けて友達になっていた。
初めは彼女たちに話しかけてもらうばかりだったし、距離を置かれている様な感じもあって、おしゃべりしていてもどこかよそよそしいところがあった。
思葉自身も、いきなりは少し怖かったので線をつくって2人と接していた。
けれどもほぼ毎日話したり、一緒に移動したりお昼を食べたりしているうちに、3人の間にあった線のような隔たりはきれいになくなっていた。
現在は、2人との間におかしな壁や境界線を感じることはほとんどない。
それと同じなのだろうか。
まだお互いのことをよく知らないため、太刀の方も、ひょっとしたら自覚がないだけで思葉の方も、広く境界線を引いている。
それで太刀の範囲が思葉のそれより広いから、線引きされているように感じてしまうのだろうか。
レモンティーを注いだグラスとお茶菓子を乗せたトレーを持って來世がテーブルに戻る。
思葉は桜の形のクッキーをつまんだ。