妖刀奇譚





思葉は4月の頃の記憶に意識を向けた。


霧崎綾乃(きりさき あやの)と武川実央(むかわ みお)とは、たまたま席が近かったのがきっかけとなって話すようになった。


それからのことは詳しく覚えていないが、ふと気がついたらすっかり打ち解けて友達になっていた。


初めは彼女たちに話しかけてもらうばかりだったし、距離を置かれている様な感じもあって、おしゃべりしていてもどこかよそよそしいところがあった。


思葉自身も、いきなりは少し怖かったので線をつくって2人と接していた。


けれどもほぼ毎日話したり、一緒に移動したりお昼を食べたりしているうちに、3人の間にあった線のような隔たりはきれいになくなっていた。


現在は、2人との間におかしな壁や境界線を感じることはほとんどない。


それと同じなのだろうか。


まだお互いのことをよく知らないため、太刀の方も、ひょっとしたら自覚がないだけで思葉の方も、広く境界線を引いている。


それで太刀の範囲が思葉のそれより広いから、線引きされているように感じてしまうのだろうか。


レモンティーを注いだグラスとお茶菓子を乗せたトレーを持って來世がテーブルに戻る。


思葉は桜の形のクッキーをつまんだ。




< 70 / 376 >

この作品をシェア

pagetop