妖刀奇譚
言われてそれらしきものを探してみると、道路の反対側に建つ携帯電話ショップの前で風船を配る青色のうさぎの着ぐるみが目に入った。
小学校低学年くらいの少年たちが、風船をもらって楽しそうに駆けていく。
確かに、着ぐるみというものの存在を知らない人が目の当りにしたら、化け物だの化生だのと騒ぎかねないビジュアルだ。
あのデザインで意外と人気があるのだから、世間一般の価値観はよく分からない。
「あれはただの着ぐるみだよ」
「なに、あの化生は着ぐるみという名なのか」
「違うわよ、中に人が入っていて」
「なんと!もう犠牲者が出ているのか!?」
「何でそうなる」
「まだ生きているのか、ならば助けなければ」
「生きてるから安心して、あと違うって!あれはああいう形をした服の一種で」
玖皎の勘違いを訂正したとき、思葉は刺すような視線を感じて脇の方を振り向いた。
そこにはかわいらしいワンピースを着た3歳くらいの女の子がいて、不思議そうに思葉を見つめていた。
小さな手で思葉を指さし、自分の手を引いている母親を見上げる。
刺すような視線の源はこちらの母親だった。
「まま、あのおねえちゃん、ひとりでおはなししてるよ」
「シッ!見ちゃいけません」
思葉とばっちり合った視線をさっと逸らして、母親は娘を抱き上げて足早にその場を立ち去った。
そこで思葉は、玖皎の声がほかの人間にはきこえていないということを思い出した。