妖刀奇譚
座敷に戻ると、青江が朴(ほお)の木で新しい柄木を作っているところだった。
玖皎の茎の形に合わせて丁寧に木を削っている。
柄木は鞘師か柄巻師が作るものだと聞いたことがあるが、青江はそのどちらでもない。
(すごいな、青江さん一人で刀が一振り出来そう……)
思わず思葉は、自分よりはるかに年上の彼に感心してしまった。
そしてすぐに失礼だったと反省する。
柄木が出来上がるのを待ってから、思葉は青江から直々に巻き方を教わった。
元と同じ諸捻巻(もろひねりまき)にしたが、予想以上に難しい。
思葉は器用な方であるけれど、これは器用不器用の問題ではなかった。
隣で青江に手本を見せてもらいながら作業をするも、彼のようにきれいな菱形をつくるのは至難の業だった。
それでもどうにか巻き終え、弟子たちから80点、青江に70点をもらえたときには、夕日が差し込む時間帯になっていた。
「たった三時間でここまで巻けるようになるなんてすごいですよ」
と褒めてくれた弟子は、渡巻をきれいに巻き直してくれた人だったので余計に嬉しく感じた。
最後に青江から手入れの仕方を教わり、ひとまず出かけた目的はすべて果たした。
ついでに教えてもらった取扱いの作法や日本刀の構造などの知識は、永近の手伝いをしていく中でも使えそうだ。