domino
25
 「おはよう・・ございます。」
 昨日よりは元気に彼女に声をかけたつもりだった。でも、相変わらず「ございます」はつけてしまった。そんな自分を相変わらず情けなく思い、知らぬ間に眉間に皺が出来ていた。
その皺を見つめて、彼女はクスリとしながら挨拶をしてくれた。
 「おはようございます。その顔、どうかしたんですか。」
 彼女のその言葉を聞いて、僕はキョトンとした顔をした。その間の抜けた顔を見て、彼女は更に笑ってこう言った。
 「大河内さんっておもしろい人なんですね。」
 彼女が何でそんな事を言っているのか全くわからなかったが、彼女が喜んでくれている事がうれしかった。だから、彼女に笑い返してみた。その笑顔が自然と二人の距離を縮めてくれた気がした。
 予想通り、彼女は熱くフェラーリ論を語り出した。昨日の予習はバッチリだった。彼女が知らない事をいかにもと言う感じで話すと、彼女が尊敬の眼差しで僕を見ているのがわかった。そして、彼女と仲良く話している僕を周りのサラリーマンが羨望の眼差しで見ているのもわかった。まだ、彼女との会話は始まったばかりだ。楽しい時間はまだまだ続く、そう思っていた。
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