domino
 いくら何でもまずいと思ったが、あの声が言う事なので従ってみる事にした。
 「先輩。」
 先輩の顔は、待っていましたといった感じだった。
 「良かったら、僕、代わりに行きましょうか。」
 今度は喜びで少し涙声になっていた。
 「大河内。お前、良いやつだな。」
 そう言って、僕の手に何かを押し込んだ。
 「じゃあな。」
 僕の肩をたたくと先輩は急いで出て行った。先輩を見送った後、僕は自分の手に何か押し込まれたのを思い出して掌を広げた。そこには1万円札が1枚くしゃくしゃになっていた。
 僕はその1万円札をしばらく見つめていた。
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