domino
 「私はブラッドオレンジジュースで。」
 「私はこれで。」
 そう言って彼女が注文したのは高級ワインだった。
 「お父さん、やっぱり飲めないのね。いかにもお酒に強いって顔しているのにね。」
 「いいんだよ。私はこれで。」
 二人の様子はまるで恋人同士のように仲が良かった。しかし、怖面の男がオレンジジュース、まるで高校生の女の子がワインという組み合わせが、それ以上に面白い雰囲気を二人の間に作り出していた。
 「ところで、一人暮らしの方はどうだ?」
 「うん。面白いよ。それより、さっき言っていた“いい話”の事教えてよ。」
 目の前の料理よりもその事に彼女は興味があるようだった。
 「例のスポンサーが1社決まったんだ。」
 「そうなんだ。良かった。決まらなかったらどうしようって思っていたんだ。」
 車が本当に好きという気持ちが、二人のその子供のように輝く目に表れていた。
< 185 / 272 >

この作品をシェア

pagetop