domino
49
和田がいなくなってから1週間ほど経とうとしていた。家族も捜索願を出したようだった。そんな事になっていても、やはり僕にとってはどうでもいい事だった。
 「大河内。少しは考えた方がいいんじゃないか?」
 “課長”と付いていない先輩の言葉に少し不自然な感じを覚えた。先輩はまた不機嫌そうだった。
 「何がですか?」
 本当に先輩が何を考えろと言っているのかわからなかった。
 「本当に言っているのか?」
 更に不機嫌になっていった。
 「だから、何の事ですか?」
 先輩の要領を得ない言葉に僕も少し苛立ちだした。
 「和田さんの事だよ。もう、いなくなってから1週間も経つんだぜ。」
 そう言って僕を急かしたてたが、いったいどうすればいいのかわからなかった。と言うか、そもそも何かをする気は全くなかった。
 「僕に何をしろと言うんですか?」
 警察に捜索願は出したと言っていたし、社長もこの事は知っていた。僕に探し回れとでも言うのだろうか、そんな風に考えると先輩と話すのが馬鹿馬鹿しくなってきた。
 「警察に届けてあるんでしょ。だったら、警察に任せればいいと思いますよ。」
 淡々と答えて、またパソコンに向かって書類を作り始めた。
 「普通、もっと心配したりして、何かしようって考えるんじゃないのか?」
 そう熱く語ってきたが僕の心には響かなかった。それどころか、今の先輩を鬱陶しくさえ思った。だから、僕はもう言葉を返すでもなく、ただ、黙々と書類を作り続けた。
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