domino
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 僕はお得意先回りをしていた。今回のプロジェクトはスポンサーとしてだけでなく、他の協力スポンサーを集めたり、制作物の進行を行ったりと言った業務全てを僕の会社で請け負う事になったからだ。
今までの僕ならなかなかこういう事はうまくいかなかった。しかし、今朝彼女に癒されたせいなのだろうか、全てが順調に進んでいった。
もちろん、あの声のおかげもあったと思うが・・・。
「なんか、今までの自分が信じられないくらいだな。”出来る男”ってこんな感じなのかな。」
ガラにもない事を考えていると、いつの間にか顔がにやけていた。

「変な顔。」
突然、声が聞こえてきた。びっくりして周りを見回すと彼女が僕の瞳に飛び込んできた。
「鈴木さん?」
あまりに唐突な出来事に僕はどうしていいのかわからず、口をポカンと開けてしまった。
「もっと、変な顔。」
笑いながら僕を指さした。
「なんで、こんな所にいるんですか?」
慌ててハンカチを取り出し、吹き出た汗を拭いながら彼女に聞いた。
「ちょっとクライアントの所に行って、そのついでに友達とランチしていたんですよ。」
「そうなんですか。」
まだ、汗を拭いていた。拭いても、拭いても、汗は止めどなく溢れてきた。もう、ハンカチは拭く場所がなくなりそうだった。本当に僕は不測の事態に本当に弱かった。そんな僕の仕草を笑いながら今度は彼女が聞いてきた。
「大河内さんこそこんな所で何しているんですか。」
汗を拭きながら大きく深呼吸をした。
「これからクライアントに報告をしに行くんです。」
僕の汗が収まると同時に、彼女の笑いも収まってきた。
「そうなんですか。がんばって下さいね。」
そう言って彼女は歩き出した。
「ありがとうございます。」
そう答えて僕も反対方向へ歩き出した。
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