domino
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 僕の隣には彼女がいた。手をつなぎながら、薄暗い靄の中で待っていた。そんな時間も楽しく思えた。所々に携帯電話の灯りだろうか、いくつも、いくつもいろいろな色に輝いて見えた。まるで、蛍の光みたいだと彼女が言い、僕も綺麗だねと優しく答えた。そんな些細な会話にさえ胸躍らせた。
 一瞬、目の前が暗くなり、次に眩しいばかりのスポットライトといくつもの花火がうち上がった。大音量の音楽が流れると会場が地響きのように震えた。彼女が立ち上がり、彼女に誘われて僕も立ち上がった。彼女に勧められたDVDの踊りは全然上手に出来なかったけども、それすらも彼女は楽しんでくれた。
 こんな時間が永遠に続いてくれれば、そう願っていた。
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