domino
 僕はそんなに気の強い方ではない。上司から何か言われれば、黙って従っているだけだ。だから、強い口調と言うものにめっぽう弱い。今の声は僕を屈服させるには十分すぎた。
 鼓動が早くなった。そんな言葉では生やさしいくらいに僕の心臓は早く、早く脈打っていた。まるで、武道館、いや東京ドームでやるコンサートを僕の心臓の中でやっているような、それくらい激しい早さで脈打っていた。
 僕の目がまず彼女の方を向いた。そして、徐々に、本当にゆっくりと僕の顔が彼女の方に向けられた。
< 25 / 272 >

この作品をシェア

pagetop