domino
9
 いつものように、いや、いつもより弱く、出来れば僕の視線を感じてほしくないつもりで、彼女を見つめた。
 たった1秒が、1時間にも、2時間にも感じられるくらい長かった。
 彼女が僕の視線に気がつき、一瞬目があった。その視線をごくごく自然にはずす。前までの彼女と同じリアクションが帰ってきた。僕の事を単なる一人のサラリーマンとしてしか見ていない、悲しいリアクションだった。
 でも、今の僕にとってはそのリアクションは天にも昇る気持ちだ。彼女が僕の事を覚えていない。これ以上の幸せはない。そう思えさえした。
 それと同時に僕の中に一つの確信が生まれた。
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