domino
22
 定時と同時に僕はダッシュで会社を出た。
 今日の彼女の車に関する知識はすごいものがあった。明日、彼女が同じように話し出したら、とても話しについていける気がしなかった。なんとかしなければいけない、そんな気持ちが僕を駆り立てた。明日までに話についていけるようにしなければいけない、そんな事を考えながら本屋に走っていた。
 本屋の自動ドアが開くのを待ちきれずに、僕は身を捩るようにして店内に入った。周りを見回し店内の“自動車雑誌”の標識を見つけるや否や、車雑誌の売り場へと向かって走った。
僕は手当たり次第、本を取っていった。
 外車の本、国産車の本、レース関係の本、中古車情報、ついにはトラック専門誌までとにかく“車”と名の付く雑誌は手当たり次第に手に取った。
 「15,200円になります。」
 店員が驚きつつ、呆れつつ、しげしげと僕の顔を見ていた。でも、そんな事を気にしている余裕はなかった。重い紙袋を抱え僕は店を出た。
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