ピアノを弾く黒猫
それは間違いなく、あたしものだった。
誕生日にお父さんに買ってもらった、黄色いヘアピン。
何も飾りはついていないけど、普段仕事で忙しくしているお父さんからもらったものだから、あたしのお気に入りなんだ。
「これ届けようと思って近づいたら、逃げられたんです。
それで追いかけたんですよ。
ストーカーって呼ばないでしょ?」
「…ごめんなさい。
勘違いしていたわね」
ヘアピンを受け取りながら、謝罪をする。
「気にしないでください優子さん。
俺への疑いが晴れて良かったですから!」
黒田くんって、本当どこまでも真っ直ぐ。
そして明るくて、凄く良い子。
「…ごめんなさいね。ありがとう」
「…優子さん、1つだけ俺の言うこと聞いてくれませんか?」
「え」
「そ、そんな嫌そうな顔しないでください。
優子さんが嫌がるようなことは頼みませんから」
「何かしら?
聞くだけなら、聞くわ」
「優子さん」
黒田くんは直角を描くように、90度に頭を下げた。
「黒田初夜、一生のお願いです!」