ピアノを弾く黒猫
「そういえば優ちゃんも話があるって言っていたわね。
何のお話かしら?」
にっこりと奈々恵さんが微笑む。
あたしは少し黙り込み、口を開いた。
「奈々恵さんは…黒田初夜について、何か知っているんですか?」
奈々恵さんは一瞬キョトンとして、すぐに笑った。
「ええ、知っているわ。
優ちゃんと一緒にいるのを見かけて驚いたわ」
「アイツは…何者なんですか?」
「初夜くんは、ピアノの天才少年よ」
ピアノの…天才少年?
アイツが……?
「小さい頃からピアノをしていてね。
一時期メディアでも凄く評判になったのよ」
「黒田くんが…ですか」
天才少年と言われて、納得した。
あのピアノの鍵盤を滑る、滑らかな指使いも。
まるで全身で弾いているような、あの表現能力も。
…天才と言われれば、納得がいく。