ピアノを弾く黒猫
「まだ遊んでて良いよ。
俺はそこのベンチにいるから」
「うん!」
「ありがとう初にぃ!」
元気よく返事した弟妹たちは、再びブランコなどの遊具で遊び始める。
俺はベンチに座りながら、その光景をぼんやりと眺めていた。
「あなたの弟さんと妹さん?」
隣から声がして振り向くと、黒髪をショートカットにした女の人が立っていた。
「そうですけど……?」
「良いお兄さんなのね」
「あ、ありがとうございます」
「私の妹も、あの子たちと同い年ぐらいなの」
隣に座った女の人が、砂場を見る。
砂場には弟妹たちと、見知らぬ女の子が一緒に遊んでいた。
きっとあの女の子が妹さんなんだろう。
「私の家は両親が共働きでね。
大学が終わったら、あの子を保育園まで迎えに行くのよ」
「そうなんですか」
「あなたのご両親も共働きなの?」
「いえ。
俺の家に両親はいません」
「そうなの?」
「はい。
母親は1番下の妹を生んで亡くなりました。
元々丈夫な人じゃなかったみたいで」