ピアノを弾く黒猫







「嘘だッ!
優ちゃんは黒田初夜が好きだ!

黒田初夜と一緒に笑う優ちゃんは、本当に幸せそうだった。
僕に見せない表情を、沢山していた」




そうなの……?

自分では気が付かなかったよ。





「しかも黒田初夜は、優ちゃんがピアノを始めるきっかけの人じゃないか。
6年も前から、優ちゃんは黒田初夜を愛してしまっているんだ!」




6年前。

黒田くんの演奏に感動したあたしは、帰り際裏口へ行った。

黒田くんに一目会いたくて。

そこであたしは、楽譜を捨てそうになっていた黒田くんに出会い、その楽譜を貰ったんだ。

今でもあの時貰った楽譜は部屋に大切に飾っている。

あたしの、大事な宝物だ。





「僕なんて、手が届かない存在。
だから僕は、こうして優ちゃんと2人きりになれる場所を用意したんだ。
優ちゃんを永遠に、僕のモノにするために……」




ギュッとあたしを抱きしめてくる生島くん。

その力はどんどん強くなっていく。





「いくっ…しまくん……離してッ!」

「優ちゃん…君は一生…僕のモノだ……」




駄目だ、通じない。

「僕のモノだ」って言い続けている。

名前を呼んでも「やめて」と叫んでも、聞く耳を持たない。





どうしよう……。









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