悪い男〜嘘つきより愛を込めて〜
「会長…あなたでないなら1人しかいな

いと思います。私どもは信頼を取り戻せ

ることはできますが、あなたの会社はこ

のことが公になればどうなるのでしょう

か⁈」


「……申し訳ないことをした。このこと

は我が社で解決させてくれないだろうか

?」


「えぇ、こちらとしても大和建設さんと

は穏便に済またいので、会長にお話しし

たのですから…」


「そんな…おじいさま。お父様はどうな

るの⁈」


慌てふためく女…お前が蒔いたことだ。


「そんな話は今、お前には関係ない」


冷徹に孫娘を黙らせる会長。


「零くん…婚約者の宮内くんだったか⁈

彼女とはどうなったんだい⁈」


「会社の為にそちらのお孫さんと結婚す

るべきだと思ったのか姿を消しました」


「彼女にも申し訳ないことをした。君は

これからどうするつもりなんだい⁈。も

し、彼女がそのお見合い相手と結婚する

というのならうちの孫娘と結婚してやっ

てくれないかい⁈私とてこれが無理強い

したとわかってる。あやつはやり方を間

違えたが娘を愛するがゆえだ。私も孫娘

の一途な願いを叶えてやりたい。どうだ

ろうか?」


孫娘可愛さに老いぼれたか⁈

「申し訳ございません。先ほども言った

とおり彼女以外考えられません。彼女を

連れ戻す為に今日お話しさせていただい

たのです」


「……そうか…愛するがゆえか」


「はい…愛のない結婚をしてもお互い辛

いだけです」


目の前を女を一瞥した。


「悪かった…今の話は聞かなかったこと

にしてくれ」


「……」


悔しい表情の孫娘を連れて会長は帰って

いった。もちろん、吸収合併の話は無し

だ。


すぐに待機していた峯岸の運転で彼女の

住むアパートに向かった。


だが、部屋にいないのか呼び鈴を鳴らし

ても出てこない。


時間が刻々と過ぎていくのに彼女の部屋

は真っ暗なまま…翌日になってもとうと

う彼女は帰ってこなかった。


その日から何度も彼女のアパートに仕事

帰りに寄った。


だが、真っ暗なまま人の気配がしない。


数日経ったある日


「副社長‥宮内さんはあのアパートを引

き払って実家へ帰られたようです」


「なんだと…実家の住所は⁈」


「申し訳ありません。調べましたがアパ

ートの大家もわからないそうです」

< 62 / 69 >

この作品をシェア

pagetop