人間カード


授業終了を知らせる最後のチャイム。


トイレとご飯の時以外に、ほとんど机から離れないあたしの一日がようやく終わった。


あたしは荷物をさっさと片付けて鞄を持つと、足早に教室を出た。


廊下を歩く度に向けられる人の視線は、あまり居心地の良いものじゃない。


「おーい。芸能人さまのお通りだ」


そんな声を無視して、あたしは別の校舎にある美術室に急いだ。


旧校舎。今は授業で使われることが無くなった古びた建物。


取り壊される事もなく、その中にあるほとんどの教室が今は部室として使用されている。


美術部員はノゾミしかいないため、学校内で2人で会うのには絶好の場所だった。


「おー来た来た!」


美術室に入ると、ノゾミは先に来ていて、あたしの方を見て笑顔を浮かべた。


もうエプロンもつけた状態で、筆を持ってカンバスの前に立っている。


絵の事はよくわからないけど、油絵ってやつだよね?


カンバスには、カードの中に閉じ込められた人間の絵が描かれていた。

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