人間カード
女教師は、俺がナイフでも取り出したと思ったのか、警戒して二、三歩下がった。
「な、なんですか!」
戸惑いながら携帯で電話をする素振りをした時、俺が突き出したモノに視線を戻す。
そして、凝視した。
俺は、真っ直ぐそれを前に差し出して女教師によく見えるようにする。
「それ……」
女教師の顔が、一気に青ざめていくのがわかった。
血の気が引く瞬間とは、この事なんだろうな。
狼狽える女教師に、俺は強気な態度で口を開いた。
「これ教え子だよな? あんたんとこの。学校の生徒と付き合ってるなんて、まずいんじゃねえか」
女教師は動揺しながら答える。
「も、目的はなんですか! お金なら返します!」
既に、子犬のように怯えたか弱い瞳。
いいねえ。
胸が熱くなり、息が荒くなる。
自分が興奮しているのがわかった。
「金なんかいらねえよ」
こいつに天罰を。
「これがアンタの弱味だ!」
俺は人間カードを取り出した。