Love nest~盲愛~

唇に感じる感触は想像していた以上に柔らかくて。

荒々しくキスされるのだと思っていたのに、触れる唇は思ってもみないほどに優しかった。

正直、何が起きているのか分からない。

何度も何度も、触れては離れ触れては離れ……。

噛まれたように感じるのに痛みは無い。

これがキスの甘噛みなのだと初めて知った。

耳を甘噛みされたことは何度かある。

けれど、やはり耳と唇は全然違った。

『キス』は、耳よりももっと彼を近くに感じる。

次第に彼のキスにのまれ、呼吸することさえも難しくて……。


「…んっ……っ…」

「すまん」


気付いたら、彼のパジャマをぎゅっと掴んでいた。

肩が上下する。

浅い呼吸を繰り返し、初めてキスした余韻さえも味わう余裕も無くて。

ゆっくりと目を開けると、彼の瞳と視線が絡まった。


「平気か?」


酸欠状態から漸くまともに酸素が吸えただけで、会話出来る余裕はまだない。

小さくこくりと頷いて、彼の胸になだれ込んだ。


「気分が悪くなったら遠慮なく言え」


髪を優しく撫でる彼。

気遣ってくれることが嬉しくて、パジャマを掴む手を背にそっと回した。


彼の優しさにちゃんと応えたら、きっとこうして大事にしてくれるのだろう。

今までは、私が彼との間に壁を作っていたからかもしれない。

恐怖と不安から逃げるように。

だから、彼の優しさに目を向けてなかっただけ。

彼は言葉では暴力的なことを口にするけれど、根底にある部分はしっかりと気遣ってくれていた。

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