Love nest~盲愛~

私の言葉に、彼の瞼がパッと開いた。

意外だったのかもしれない。

前みたいに、媚びる女は要らないと言われたらどうしよう。

口走った後に後悔しても遅いのに……。


「本気で言ってるのか?」


ゆっくりと私の方に寝返った彼が、真っすぐ見据えて口にした。


「冗談を言うように見えますか?」


大人の男性とのキス。

未知なる恐怖に心臓がバクバクと暴れ出す。

思わずごくりと生唾を飲み込むと、彼の手が髪を優しく撫でる。


「無理しなくていい」


やはり、心の奥を見透かしているようだ。

けれど、こんなチャンスは二度と無いかもしれない。

そう思えた私は、彼の腕の中に自ら飛び込むように……。


恐怖が消えたわけじゃない。

この先どうしていいのか、分からない。

けれど、何もしないで後悔するより、して後悔した方が私らしいと思えたから。

ゆっくりと顔を持ち上げた。


「キス、……して下さい」


これを最後にしよう。

今夜、これ以上縋るのは止めないと、本当に嫌われてしまう。

しつこい女は嫌いだと思うから……。

意を決して瞼を閉じた。

もう私に出来ることは何一つない。

あとは彼に全てを委ねるほか……。


左胸が早鐘を打つ。

彼の胸に縋り付くような体勢の今、その鼓動が彼に届いていそうだ。

数秒待っても十数秒待っても何も起こらない。

やっぱり、縋る女は嫌いなのだろう。

目尻に涙が滲み、諦めて瞼を開けようとした、その時。

頬に彼の手が添えられた。

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