Love nest~盲愛~

無理強いはしないという。

けれど、例えふりであっても、表向きは恋人のように扱うから、バレないように振る舞って欲しいと。


このお屋敷の外では常に監視されているという。

だから、私はこの屋敷から出ることを許されなかったのだと。


誤解が誤解を招いて、あらぬ方向に考えていた自分が恐ろしくもある。



彼と共に朝食を摂り、彼の出勤準備を手伝う。


ネクタイは結べないから、カフスボタンだけでもと思い、両袖にカフスを着けていると。

チュッと額にキスが落とされる。


「お兄ちゃん、私のこと、好き?」

「愚問だ」


骨ばった指先が顎を捉え、上を向かされる。

自然と絡まる視線の先には、優しい眼差しの彼。


「えなは?」

「ひみつ♪」

「いい度胸だな」

「んッ……っ……」


彼の求めている答えではなかったからなのか。

ベッドに押し倒され、そのまま強引に唇が塞がれた。


けれど、その先は凄く優しく丁寧で。

頬に添えられる手も髪を撫でる手も。


ゆっくりと離される唇。

甘い余韻を残して彼の気配が遠のいてゆく。

慌てて目を開けて起き上がると、彼が驚いた様子で視線を向けた。


「どした?」

「お帰りは何時頃ですか?」

「フフッ、寂しいのか?」

「っ……」


図星だ。

彼のぬくもりが遠ざかっただけで寂しさを覚えてしまった。

目の前にいるというのに。


「会社に来るか?」

「え?……いいんですか?」

「俺の恋人だって説明するけど、それで良ければ」

「………では、お願いします」

「フッ、積極的だな」

「だって、どんなお仕事してるのか見たいもの」

「家と殆ど変わらないと思うぞ?」

「だとしても!」

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