Love nest~盲愛~
この屋敷にいるスタッフは、彼が厳選して信頼している従業員らしい。
もしかしたら間者が送り込まれているかもしれないと、定期的に極秘で試験的なものを取り入れているという。
だからこそ、今のスタッフは大事にしたいんだと。
そして、除籍するための最大の難関である結婚相手に、白羽の矢が立ったのが私だという。
家族を失い、住む家もなく、行く当てもない私を、彼はこれを逃したら二度と機会は訪れないと思ったと話してくれた。
私をここへ連れて来た理由。
彼の結婚相手になるために。
初恋相手からそんなことを熱い眼差しを向けられ言われたら、断る理由が思いつかない。
幼少期に家族の愛情が薄かったこともあり、性格に多少難ありかもしれないけれど。
こんな風に大事にされたら、少しくらい言葉が乱暴でも気にならない。
昔も今も、彼は私にとって白馬に乗った王子様的存在に変わりはないから。
「えな」
「はい」
「ゆっくり考えて、結論を出してくれればいいから」
「……はい」
優しく髪を撫でる彼。
キャバクラ『violette』で会った時の彼と同一人物とは到底思えないセリフ。
けれど、それにも理由がある。
養父母の目を誤魔化すために女遊び的なものも当然して来たという。
けれど、ちゃんとした交際をしたことは無いらしい。
恋愛よりもお金と自立が最優先だったらしい。
だから、不愛想で短気な性格は大目に見てくれと言われた。
彼が置かれていた状況が状況だから、理解出来る。
きっと、一瞬でも隙を見せたらつけ込まれるような環境だったと思うから。